Unix の歴史と思想

April 30, 2017    Unix

これは、自分がプログラミングを始めた頃に読みたかった(読むべきだった)というつもりの文章である。

Unix の歴史

Linux 登場までの歴史を簡単にまとめた。省いているところも多い。

Unix の誕生

ベル研究所の Ken Tompson が、1969年に開発したゲーム用プラットフォームが起源である。当時はメインフレームで動く TSS が実験されていた (Multics) が、大規模で複雑なプロジェクトだった。 ベル研究所は Multics プロジェクトから脱退したが、彼らは対話的コンピューティングを必要としていた。その後ゲーム開発を可能にするプログラム(=カーネル)が生み出された。これが Unix の元となった。Unix の語源は、Multics (Multiplexed information and computer system) を意識した UNiplexed Information and Computer System だと言われている。

ワードプロセッサをサポートする過程で、Unix OS が誕生した。初期の Unix OS はアセンブリ言語で書かれていたが、後に移植性を高めるためにC言語、つまり高水準言語で書き直された。 この頃は主に DEC (Degital Equipment Corporation) の PDP-7 というミニコンピュータで Unix は稼働していた。

1970年代に、Unix についての論文が ACM に投稿されたことで、世界中の研究機関が Unix に興味を持った。ベル研究所の親会社である AT&T は、電話と関係ない技術だったために、Unix のソースコードを配布することになった。

BSD Unix

ARPANET は、インターネットの起源となった、複数の研究機関を接続したパケット交換ネットワークである。Unix と同時期の 1969年から開始された。当時 ARPANET は PDP-10 で稼働していたが、次世代の VAX シリーズ生産とともに淘汰されつつあった。そこで VAX 上の Unix で動作する TCP/IP プロトコルスタックの実装が必要になった。初期の Unix のネットワークサポートはごく貧弱だった。

Unix を拡張したり性能を向上させる研究をする大学は多数あった。そのうちカリフォルニア大学のバークレーキャンパスは、特に Unix 開発の中心的存在になっており、そこで開発されたソフトウェア郡は BSD (Barkley Software Distribution) として、1977年に最初にリリースされた。その開発成果はベル研究所にフィードバックされた。 ベル研究所では、改良を重ね “UNIX System” という名前でリリースしていた。 1979年にリリースされた Version 5 は、最も成功した Unix だった。

ARPANET の陣営は、1983年に BSD 4.2 とともにリリースされた TCP/IP 実装 (バークレーAPI) を最終的に採用した。この TCP/IP のおかげで、ARPANET は衰退を免れ、Unix もさらに広まることとなった。

Unix 産業

1970年代、当時無名の企業だった Microsoft も Unix 産業に参入し、Xenix という商品を販売していたが、長くは続かなかった。1981年に IBM が開発した CP/M OS のクローンの1つを買収する歴史的に重要な契約を結んだ。この OS は後に MS-DOS (MicroSoft Disk Operating System) となり、IBM のハードウェアと独立して販売する契約もした。そして MS-DOS は、デスクトップコンピューティング市場を独占していった。

当時 UNIX System III のソースライセンスは4万ドルであったが、実際には裏で Unix のソースは流通しており、ベル研究所はそれを黙認していた。 Sun Microsystems は、ネットワーク機能を組み込んだ夢の Unix マシンを目標としており、ハードウェアとバークレーで開発された Unix を組み合わせた SunOS によってワークステーション産業を確立した。この商用化は、Unix System III のソースライセンス料を考えると、まだ良いことのように思えた。

また、1983年には AT&T で歴史的な分割が起きた。Unix の製品化を阻んできた裁判に勝利し、直ちに UNIX System V の商用化をした。ベル研究所や子会社は本体から分離された。

これらの Unix 商用化によって、初期の Unix の活力の原点であったソースコードの自由なやり取りは失われていった。また、Unix 市場への新規参入企業は、「差別化」による経営戦略をした。これは結果的に悪い影響を与え、Unix インターフェースはばらばらになり、互換性は失われ、Unix 市場は細分化された。 この頃 MIT 人工知能研究所では、Richard Stallman というプログラマが、Unix の完全フリーなクローンである GNU (GNU is Not Unix) OS を書き始めていた。

Unix 戦争

それ以降の数年間、Unix コミュニティでは、UNIX System V と BSD Unix 間の標準化という、いわゆる Unix 戦争に没頭していた。 最終的に、1985年に発足した、IEEE が支援する POSIX (Portable operating system interface) で真剣な標準化が進められた。POSIX は、BSD と System V Release 3 の共通部分を取り、より優れている BSD のシグナル処理とジョブ制御、System V の端末制御を組み合わせている。 これ以降の Unix は POSIX に忠実に従っている。

1987年には GNU C コンパイラの最初のバージョンが登場し、GNU ツールセットの核となるエディタ、コンパイラ、デバッガ等の基本ツールが揃った。 また、グラフィックエンジンである X Window System は、開発者たちがライセンス無しでソースコードを公開したことが功を奏し、プロプライエタリなライバルを打ち破り、地位を確立していった。

AT&T と Sun を中心とした Unix International と、POSIX 標準化によって System V と BSD Unix の争いは最終的に終結した。しかし、その間に、IBM, DEC, Hewlett-Packard などの2番手ベンダーが OSF (Open Source Foundation) を結成し、Unix International と対抗する構えを見せたことにより、Unix vs Unix という第二次 Unix 戦争が始まった。

その間に Microsoft は Windows 3.0 をリリースし、その支配を確実にしていた。

Linux の登場

当時の商用 Unix は高額で、学生が買えるものではなかった。フィンランドの Linus Torvalds は、大学の教材OS (Minix) を拡張して遊んでいたが、物足りなさを感じて1からモノリシックカーネルを作り始めた。そうして出来上がったのが後に Linux となるカーネルである。 Linux の開発は、電子メールや Usenet のニュースグループを中心にインターネット上で行われた。

また、1991年に開発された World Wide Web はインターネットのキラーアプリケーションとなり、Linux はインターネット機能と X の両方を持ったことで、インターネットの大衆消費市場が成立した。潜在開発者のプールは拡大し、開発のトランザクションコストは下がった。

その頃 Unix コミュニティでは、Unix からプロプライエタリなコードから解放することを目標としており、結果的に BSD 自体への影響は破壊的なものになってしまった。そして BSD コミュニティは分裂し、Linux に大きく遅れをとり、Unix コミュニティのトップの座を譲ることになった。

Unix の思想

歴史的に、Unix は商業的な側面が強く、商標として認められているものは “UNIX” を名乗れるが、それ以外の派生は “Unix” のように書く。そういう意味で Linux もここでは “Unix” に含める。

テキストインターフェース

基本的に Unix のプログラムはテキストインターフェースを持つ。 その理由は、テキストが最も「クリーン」なインターフェースだからである。 Unix 思想では、複雑なソフトウェアを書くために、全体の複雑性を下げる選択をする。 単純で小さいモジュールを組み合わせるために、適切なインターフェースが必要である。 バイナリは人間には読みづらいし、グラフィカルなインターフェースは接続が難しい。 また、クリーンであるために、余計な情報は出力しないほうが良いし、綺麗に表示する必要は無く、その出力は予想に反さないものであることが望ましい。

人間の時間を無駄にしない

マシンの値段が下がるにつれて、プログラマの時間は高価になる。 よって、プログラマは経済性を高めるために、時間を節約すべきである。手作業のハックを避け、自動化することが望ましい。

また、唯一の正解を探すことは生産性を下げる。プロトタイピングは美徳であり、途中でプロトタイプをすべて捨てるという勇気も必要である。

まとめ

Unix 思想を一言でまとめると:

Keep It Simple, Stupid!

参考文献

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